読売新聞の記事について
先週読売新聞に歯科器材の滅菌についての記事が載っていました。
滅菌をしっかりやりましょう、というのは主張としては至極当然のことなのでそれは構いません。
たまたまですが前回のブログにも書いたように、
当院では使いまわしはしませんしグローブもディスポで使い捨てなので記事が出たからといって慌てることはありません。
しかしながらその新聞記事中に間違った記載があるとこれは問題だと思います。
当院も3年前から外来環境加算を厚生局に申請し医院の玄関を入った正面にその旨を掲示しています。
しかし外来環境加算の施設基準の要件に記事にあるようなグローブを使いまわさない、
エアタービンの数を揃えるといったことは入っていません。
外来環境加算はほぼ感染対策とは関係ないと言って差し支えないでしょう。
口腔外の吸引装置の常備は要件に入っているのでこれは感染対策の一種ではあります。
AEDや救急薬品、心電図、経皮的酸素モニター、酸素ボンベと酸素マスクの常備と
BLSなどの研修を受けた歯科医師の常駐が要件のメインではっきり言えば緊急時の対応についてのものです。
どうもこういうのをみるとどこまで取材して裏をとっているのか非常に疑問に思います。
我々保険診療を行う医療所は勝手に治療費を値上げしたりは出来ません。
通称中医協という厚生労働省の小委員会で一つ一つの診療項目について厳格に治療費が決められています。
しかし昨今の社会保障費の増大によって歯科治療費は物凄く抑え込まれています。
歯科と卵は物価の優等生と言われるゆえんです。
そんな中で感染対策に相当な資金を投資するのは経営に多大な影響を与えるものなのです。
当院でも抜歯後や炎症の患者さんの経過観察でお越しいただくことが多いのですが、
そういう場合は再診料だけで診療を行うことになり下手をすると赤字となります(ディスポの手袋、コップ、エプロンを必ず使いますので)。
しかし赤字になるからと言って経過観察を止めるわけにはいきません。
なにが言いたいかというと、厚生労働省やメディアは「感染対策をしっかり」といいますが、
現状ではその感染対策費用は診療報酬(治療費)には入っていないといえるほど低いのです。
感染対策をというならしっかりやっているところには外来環境加算のような加算をつけて欲しいですね。
言うだけならタダなのですが、言うからには責任を持ってその環境を整えていただきたいものです。
ただ、感染対策費を治療費に上乗せすると患者さんの負担額も大きくなります。
これは正直に言って大きなジレンマです。
安く感染対策が出来るような大きな技術革新が起きないものでしょうかねえ。