親知らずの抜歯 二回法
下顎の親知らずの抜歯で最も困るのが、下顎の骨内を通っている神経血管束と親知らずが当たっている場合です。
あとは舌側(内側)に寄って舌側の骨が薄くなっている場合。
CTでこういった所見をみると抜歯を躊躇してしまいます。
親知らずの抜歯は抜くことによって生じるリスクと保存することによって生じるリスクを天秤にかけて、
どちらのリスクがより大きいかというのを評価して抜くかどうかを提案します。
なので抜くことによるリスクが大きいからといって単純に保存しておく選択ができるわけではありません。
それよりも大きいと思われるリスクが保存する選択で生じる場合は抜くことを選択しないといけないわけです。
骨内の神経血管束と親知らずが当たっている場合、抜歯による物理的なダメージで知覚鈍麻が生じることがあります。
知覚鈍麻とは正座をして立った時の足のしびれのような症状が出ることです。
右なら右、左なら左の半側に出現し、下唇の真ん中から口角よりやや広いくらいの範囲に現れます。
3年前に口腔外科学会総会のミニセミナーで学んだのは親知らずの歯冠だけとって当たっている根を置いておく方法ですが、
これは一度でも炎症を起こした親知らずは適応外となるので結構使い辛い方法です。
そこでよく使うのは古典的ですが最も汎用性の高い二回法です。
歯冠と根を分割して歯冠だけ取り出すのは同じですが、3~6か月おいて二度目の抜歯で根を抜く方法です。
歯根の形態などにもよりますが、根が歯冠を取り除いて空いたスペースに少しずつ動いて神経から離れてリスクを軽減できます。
ただ良いことばかりではなくて、二回やるのでその度に腫れたり痛みが出たりします。
また根が肥大していたり複根にわかれていたりすると動かなかったりします。
ここ最近、抜かないといけないがリスクが高く根形態から二回法が適応、という患者さんがなぜか多く立て続けに施術しています。
上手くいけば年始年末の直前辺りが2回目の抜歯の時期になりそうです。
こういう時にCTの有用性を非常に強く感じます。
というか、CTが無いとリスク評価も適応評価も完全には出来ないですね。
僕の親知らずも実は2回法にむいていると思うのですが、
流石に自分で自分の親知らずを抜くのは難しいので誰かやってくれないかな。